涙が止まらないのはなぜ?理由もなく泣いてしまう原因、ストレスやうつ病との関係、相談先と受診の目安を精神科医が解説
「涙が止まらない」とは、悲しい出来事がはっきりしないのに涙があふれる、泣き出すと自分では止めにくい、といった状態のことです。ストレスや疲れなど心と体の状態が関わる場合もあれば、目の病気が関わる場合もあります。
この記事では、涙が止まらない原因、うつ病などとの関係、目の病気との見分け方、相談先と受診の目安について、亀戸のひびきメンタルクリニックの精神科医の監修のもと解説します。
はじめにお伝えしたいこと 涙が止まらないのは、「弱いから」でも「甘えているから」でもありません。涙は、心と体が「少し休みたい」と伝えているサインのひとつと考えることもできます。泣いてしまう自分を責めるより先に、今の状態をやさしく振り返るところから始めてみてください。
この記事でわかること
- 涙が出る3つの仕組みと、涙が止まらない主な原因
- うつ病やその他の状態と涙もろさの関係
- 目の病気による涙との見分け方
- その場でできることと、相談先・受診の目安
涙が止まらないのはなぜ?涙が出る仕組みと主な原因
涙の分泌には自律神経が関わり、止まらない原因は大きく「心と体の状態」と「目の病気」の2つに分けて考えられます。
涙は涙腺でつくられ、目の表面をうるおしたあと、鼻涙管を通って鼻へ流れていきます。出るきっかけによって、一般に次の3つに分けられます。
| 涙の種類 | 出るきっかけ | 主な役割 |
|---|---|---|
| 基礎分泌の涙 | 常に少しずつ出ている | 目の表面をうるおし、守る |
| 反射性の涙 | ゴミ・煙・玉ねぎ・乾燥などの刺激 | 異物を洗い流す |
| 情動性(感情)の涙 | 悲しみ・悔しさ・感動・安心など | 感情の高まりにともなって出る |
「理由もなく涙が止まらない」ときは情動性の涙が、感情と関係なく涙があふれるときは反射性の涙や涙の通り道のトラブルなど目の病気が、関わっていることが多いと考えられます。
涙が止まらないときの早見表
| 気になる様子 | 考えられること | 主な相談先 |
|---|---|---|
| 気持ちが沈む・理由なく泣けてくる | ストレス・疲労、うつ病・適応障害など | 心療内科・精神科 |
| 生理前や産後、更年期に涙もろい | ホルモンの変化が関わる気分の変化 | 婦人科、心療内科・精神科 |
| 片目だけ涙があふれる・目やにが出る | 鼻涙管閉塞などの目の病気 | 眼科 |
| 目のかゆみ・充血・乾きをともなう | アレルギー性結膜炎・ドライアイなど | 眼科 |
理由もなく涙が出るとき、心と体では何が起きている?
ストレスの積み重ねや睡眠不足、疲労によって、感情を調整する力が一時的に落ちている可能性があります。
厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」でも、ストレスが続くと気分の落ち込みやイライラなどのこころの反応が出ることがあると紹介されています。次のような状態が重なると、ふとしたきっかけで涙があふれやすくなると考えられています。
- ストレスの蓄積:仕事や人間関係、環境の変化などで緊張が続き、こころに余裕がなくなっている
- 自律神経のバランスの乱れ:緊張と休息の切り替えがうまくいかず、感情の波が大きくなる
- 睡眠不足・疲労:十分に休めていないと、感情のブレーキが効きにくくなる
- がまんの積み重ね:つらさを人に話せず、ひとりで抱え込んでいる
仕事中は緊張や「しっかりしなければ」という気持ちが続きやすく、注意されたひと言などをきっかけに、こらえていた気持ちがあふれることがあります。夜は一日の緊張がゆるみ、ひとりで考えごとをする時間が増えるため、昼間は抑えていた気持ちが出てきやすいといわれています。
こうした涙は、誰にでも起こりうる反応です。ただ、涙もろさが長く続く、ほかの不調も重なっている場合は、次に紹介する状態が関わっていることもあります。
涙が止まらないのはうつ病のサインの場合もある?
涙もろさはうつ病で見られることがありますが、涙だけでうつ病かどうかが決まるわけではありません。
厚生労働省のメンタルヘルス情報サイト「みんなのメンタルヘルス」では、うつ病の代表的な症状として、気分の落ち込みや、これまで楽しめていたことへの興味・喜びの低下などが挙げられています。うつ病では、悲しい気持ちが続くなかで、涙もろくなったり、理由がわからないまま泣けてきたりすることがあります。
うつ病で見られることのあるサインには、次のようなものがあります。
- 一日中気分が沈んでいる、むなしい、悲しい
- 好きだったことに興味がわかない、楽しめない
- 寝つけない・夜中や早朝に目が覚める、または眠りすぎる
- 食欲が落ちる、または食べすぎる
- 疲れやすい、気力がわかない
- 集中できない、決められない
- 自分を責める気持ちが強い、自分には価値がないと感じる
米国精神医学会の診断基準(DSM-5)では、こうした症状がほぼ毎日、2週間以上続いているかどうかが、診断を考えるうえでの目安のひとつとされています。ただし、診断は医師が診察のうえで総合的に行うもので、この一覧は自己診断のためのものではありません。うつ病についてはうつ病の症状ページやうつ病の初期サインの解説もあわせてご覧ください。
うつ病以外に、涙もろさが目立つことのある状態は?
適応障害や不安症、ホルモンの変化が関わる時期、脳の病気などでも、涙もろさが目立つことがあります。
当てはまりそうでも、ご自身で決めつけずに参考程度にご覧ください。
- 適応障害:特定のストレスとなる出来事をきっかけに、気分の落ち込みや涙もろさ、不安などが現れる状態です。ストレスの原因から離れると、気持ちが落ち着きやすい傾向があるといわれています
- 不安症(不安障害):強い不安や緊張が続くなかで、涙が出やすくなることがあります
- 月経前症候群(PMS)・月経前不快気分障害(PMDD):生理前にイライラや気分の落ち込み、涙もろさなどが現れ、生理が始まると和らぐのが特徴とされています。気分の症状が強く生活に影響するものはPMDDと呼ばれます
- 更年期:女性ホルモンの変化にともない、ほてりなどとあわせて、気分の落ち込みや涙もろさを感じることがあります
- 産後の気分の変化:出産後しばらくの間に、涙もろさや気分の不安定さが一時的に現れることがあり、マタニティーブルーズと呼ばれます。長く続く場合は、産後うつ病などとの区別が必要になることがあります
- 脳の病気にともなう感情失禁:脳血管障害や認知症などで感情のコントロールが難しくなり、ささいなことで涙が出ることがあります。年齢とともに涙もろくなるのは自然な変化であることも多いですが、急に目立つようになった場合は医師にご相談ください
ストレスとの関わりが深い状態については、適応障害の症状ページや燃え尽き症候群(バーンアウト)の解説も参考になります。
目の病気で涙が止まらない場合は、どう見分ける?
気持ちと関係なく片目だけ涙が出る、目やにやかゆみがあるといった場合は、目の病気の可能性があり眼科が相談先です。
涙があふれる症状は流涙症と呼ばれ、涙の量が増える場合と、涙の通り道がつまる場合があります。代表的なものは次のとおりです。
- 鼻涙管閉塞:涙の通り道がつまり、涙が鼻へ流れずに目からあふれる状態です。片目だけに起こることも多く、目やにをともなうことがあります
- ドライアイ:目の表面が乾くと、その刺激で反射的に涙が出て、かえって涙目になることがあります
- アレルギー性結膜炎:花粉やハウスダストなどで、目のかゆみ・充血とともに涙が出ます
見分ける手がかりは次のとおりです。
| 感情による涙 | 目の病気による涙 | |
|---|---|---|
| 出るタイミング | 気持ちが動いたとき、考えごとをしたとき | 気持ちと関係なく、ずっと・くり返し出る |
| 出る目 | 両目から出ることが多い | 片目だけのこともある |
| 一緒に出やすい症状 | 気分の落ち込み、不眠、疲れ | 目やに、かゆみ、充血、まぶしさ、乾き |
| 主な相談先 | 心療内科・精神科 | 眼科 |
「涙が止まらない 何科」と迷ったときは、目の症状があれば眼科、気分の変化があれば心療内科・精神科をひとつの目安にしてください。両方が重なることもあります。
涙が止まらないとき、その場でできることは?
無理に止めようとせず、落ち着ける場所へ移ってゆっくり呼吸し、気持ちが静まるのを待つことが一つの方法です。
仕事中や人前で涙が出てしまったときは、次のような工夫を試してみてください。
- ひと言伝えて場を離れる:「少し席を外します」と伝え、お手洗いなどひとりになれる場所へ移ります
- ゆっくり呼吸する:鼻から吸って、口から長めに吐く呼吸をくり返します
- 無理に止めようとしない:「泣いてはいけない」と力を入れるほど、かえってつらくなることがあります
- 体の感覚に意識を向ける:冷たい水で手を洗う、温かい飲み物を少しずつ飲むなど、五感に意識を移します
その場を乗り切ったあとは、休養と睡眠をとることも大切です。厚生労働省の「e-ヘルスネット」でも、こころの健康のために睡眠や休養が大切であると紹介されています。眠れない夜が続く方は、睡眠を整える生活習慣のヒントも参考にしてください。
心療内科・精神科への相談を考える目安は?
涙もろさや気分の落ち込みが2週間以上続く、生活に支障が出ているといったときは、相談を考える目安になります。
- 涙が止まらない、気分が沈む状態が2週間以上続いている
- 仕事・家事・学業に支障が出ている
- 眠れない・食べられない状態が続いている
- 休んでも、自分ひとりでは気持ちを立て直しにくい
- 「消えてしまいたい」という気持ちがよぎる
「2週間」は、あくまで相談を考える目安のひとつです。症状が急に悪化しているとき、「死にたい」「消えたい」という気持ちが強いとき、日常生活が送れないときは、2週間を待たずに、早めに受診・相談してかまいません。
当てはまらなくても、「つらい」「話を聞いてほしい」と感じたら、それだけで相談してよい理由になります。
心療内科と精神科の違いは?
一般に、心療内科はストレスなどが関わって体に症状が出る状態(心身症)を、精神科は気分の落ち込みや不安など、こころの症状を主に扱う診療科です。実際には重なる部分が多く、気分の落ち込みや涙もろさは、どちらでも相談できます。
つらくて消えたい気持ちがあるときは、どこに相談できる?
電話やSNSで相談できる公的な窓口があり、厚生労働省「まもろうよ こころ」で一覧を確認できます。
「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちがあるときは、ひとりで抱えずに、話を聞いてもらえる窓口を頼ってください。厚生労働省のサイト「まもろうよ こころ」では、次のような相談先が紹介されています。
- こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556):お住まいの地域の公的な相談窓口につながります
- いのちの電話:つらい気持ちを電話で聞いてもらえる窓口です
- SNS・チャットでの相談:電話が苦手な方は、LINEなどで相談できる窓口もあります
受付時間は窓口や地域によって異なり、変わることもあるため、最新の情報は「まもろうよ こころ」でご確認ください。命の危険を感じるときは、119番などの緊急の連絡先を利用してください。
相談窓口とあわせて、医療機関への受診・相談も選択肢のひとつです。「死にたい」「消えたい」という気持ちが強いとき、症状が急に悪化しているとき、日常生活が送れないときは、つらさが続いた期間にかかわらず、2週間を待たずに、早めに心療内科・精神科へ受診・相談してかまいません。
心療内科・精神科では、どのように話を聞いてもらえる?
いつから・どんな場面で涙が出るか、睡眠や食欲、生活への影響などを医師が順にお聞きし、一緒に整理していきます。
初めての診察では、一般的に次のようなことをお聞きします。
- いつから続いているか、どんな場面で涙が出やすいか
- 睡眠・食欲・体調の変化と、仕事や家事など生活への影響
- 最近の出来事や、ストレスに感じていること
- 治療中の病気や飲んでいる薬
うまく話せるか不安な方は、気になることをメモにして持参するのもおすすめです。診察中に涙が出てしまっても、自然なことですので気になさらないでください。
治療の進め方は、診察で状態をうかがったうえでご相談します。休養や環境の調整、必要に応じたお薬の使用などを、お一人おひとりの状態に合わせて検討します。亀戸のひびきメンタルクリニックでも、気分の落ち込みや涙もろさに関するご相談をお受けしています。
身近な人の涙が止まらないとき、どう接すればよい?
否定せずに話を聴き、励ましすぎず、休める環境を整えることが、周りの人にできる支えになると考えられています。
厚生労働省の「こころの耳」などを参考に、次の4つを意識してみてください。
- 否定せずに話を聴く:「そんなことで泣かなくても」と言わず、相手のペースで話を聴きます
- 励ましすぎない:「がんばって」は、かえって負担になることがあります。「話してくれてありがとう」と受け止めるだけでも十分です
- 休める環境を整える:家事や仕事の負担を少し肩代わりするなど、休みやすい状況をつくります
- 相談先を一緒に調べる:本人が望むときは、医療機関や相談窓口を一緒に探します
支える側の方も、心身が疲れてしまうことがあります。周りの方自身も、ひとりで抱え込まずに相談先を頼ってください。
よくある質問
理由もなく涙が止まらないのは病気ですか?
涙が出ること自体は自然な反応で、ストレスや疲れが重なれば誰にでも起こりえます。ただし、気分の落ち込みや不眠をともなって2週間以上続く場合は、うつ病などが関わっていることもあるため、気になるときは医療機関にご相談ください。
涙が止まらないときは何科を受診すればよいですか?
目やに・かゆみ・充血など目の症状があれば眼科、気分の落ち込みや不安をともなう場合は心療内科・精神科が目安です。亀戸のひびきメンタルクリニックでも、涙もろさや気分の落ち込みのご相談をお受けしています。当院は予約制のため、まずお電話でご予約ください。
生理前になると涙が止まらなくなるのはなぜですか?
生理前のホルモンの変化にともない、気分の落ち込みや涙もろさが現れることがあり、月経前症候群(PMS)と呼ばれます。気分の症状が強い場合は月経前不快気分障害(PMDD)と呼ばれます。つらさが続く場合は、婦人科や心療内科・精神科にご相談ください。
人前で泣いてしまうのを止める方法はありますか?
涙をすぐに止められる決まった方法はありませんが、落ち着ける場所へ移る、ゆっくり息を吐く、冷たい水で手を洗うなどの工夫で、気持ちが落ち着きやすくなることがあります。無理にこらえず、自然な反応と受け止めることも大切です。
まとめ
- 涙が止まらない原因は、心と体の状態と目の病気に大きく分けて考えられます
- 理由もなく涙が出るときは、ストレスや睡眠不足、疲労が関わっている可能性があります
- 涙もろさはうつ病や適応障害などでも見られますが、涙だけで病気かどうかは決まりません
- 片目だけ・目やにやかゆみがあるときは眼科、気分の落ち込みが続くときは心療内科・精神科が相談先の目安です
- 「消えたい」という気持ちがあるときは、公的な相談窓口をすぐに頼ってください
涙が止まらない日が続くのは、こころと体が休息を求めているサインかもしれません。つらさが続くときは、江東区・亀戸のひびきメンタルクリニックでもご相談をお受けしています。